この2週間ぐらいでアメリカの金融界が大きく揺れ動いているのでとりあえず何か書いておかないと。
春に大手投資銀行ベアー・スターンズの破綻が起こり、最近になって住宅金融会社ファニー・メイとフレディー・マックを政府の管理下に置くことによる事実上の国有化、バンク・オブ・アメリカによるメリルリンチの救済合併、リーマン・ブラザーズの倒産(会社更生法申請)、AIGの破綻→政府による救済、と目まぐるしい出来事が起こった。
すべての根源は2000年代に入ってからの不動産バブルが2007年以降崩壊したこと。それに伴って住宅ローン(モーゲージローン)の貸し倒れが急増し、ローンを証券化した債券を買っていた機関投資家や在庫に抱えていた金融機関が巨額の損失を被った。それで信用不安が広がって投資銀行は資金不足に陥ったりさらに収益が減ったり。
1999年までアメリカではグラス・スティーガル法というのがあって、預金を集めて融資をする銀行(商業銀行)と企業の株式・債券発行による資金調達や企業合併などの仲介をする証券会社(投資銀行)が分離されていたが、その法律の撤廃によって商業銀行が投資銀行を買収したりして両方の事業を行うユニバーサルバンクが生まれた(シティバンクやJPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカなど)。預金は預金保険によって保証されているので商業銀行の資金調達は比較的安定しているし、資本比率規制によって取れるリスクも限られている。一方の投資銀行は比較的少ない資本と大量の短期資金の借り入れによって運営されていて、レバレッジが大きい分、収益の振れも大きくて、今のように信用不安が起こると資金調達に支障を来しやすい。バランスシート上に市場性資産が多いため、資産価格が急落したときには時価会計で巨額の損失を計上しなければいけないとうのも経営を不安定にさせる。今は無傷のゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーも近いうちに他の銀行と合併してユニバーサルバンクになる可能性もある。
本来は自由主義経済の原則として企業の損失は出資者の責任のはずだが、金融機関同士の取引は巨額で、そのままにしておくと破綻した金融機関の取引先がさらに連鎖倒産、という事態になるため、倒産した場合の影響が甚大なものに限って政府が資本投下したり債務保証をするなりして救済しているという状況。共和党からは政府がどんどん金融機関を国有化している状況を「financial socialism(金融社会主義)」であるとして非難の声が上がっている。しかも法律に基づいた措置ではなく、FRBや財務省の裁量で救済すべきかどうか、どのように救済するのかが決められているのも問題だが、大統領選挙が近いために、今の政権の下で明文化したルールを整備することもできない。救済に必要な巨額な資金の財源をどうするのか、というのも未解決だ。この金融危機をどう収束させるのかは次期政権の最初で最大の課題になるだろう。
地元紙Contra Costa Timesの記事によれば、ベイエリアでは7月の住宅販売が1年ぶりに前年比プラスになった反面、過去1年で住宅価格が平均して三分の二に下がった。住宅バブルはアメリカ全体で起こったけど、特にベイエリアは価格上昇が激しかったので下落も大きい。数年前のニュースで、それまでの仕事をやめて、家を買ってはリフォームして転売することを生業にする人が増えているというのを見たことがあるが、末期的症状だと思ったのを覚えている。
資産価格というのは経済から独立して決まるのではなく、どんな資産も経済活動の裏付け(その資産からどんな経済的利益が得られるのか)によって価値が決まるので、実質経済成長で説明できる以上のペースで価格が上昇するのはバブル以外の何物でもない。
by かんがへなし
病院のベッドサイド端末に新聞…